「ユーミン万歳!」聴き比べてみた

 

 

 

「ユーミン万歳!」全曲リミックスという説明もありますが、ほんとにそうかい?

ということで、既存音源と新音源の明らかに音が違う個所や、音が部分的に追加/削除されているといった違いを探してみました。

聴き比べは下図のような制作過程を想定し、聴き比べ[1][2][3][4]の3つの聴き比べを行っています。

なお、下図は、当サイトで想像したもので、実作業に基づいたものではありません。本当にこのようになっているかどうかは、わかりません。

 

グラフィカル ユーザー インターフェイス

自動的に生成された説明  

    本作には大きく分けると、従来のステレオ(2MIXと以下呼びます) と 空間オーディオ用のMIX が作られているようです。
前者は、CDLPDL購入用の配信、サブスク配信で提供されており、後者はAppleMusicのサブスク配信のみでDolbyAtmos用の音源として提供されています。

    2MIX配信音源には全曲ではありませんが、リミックスされていると思われる曲が存在します。
リミックスについては下記のような錯綜とも思える情報が出ていますが、どの曲がこれに当たるかは公表されていません。

    配信は配信サービス元に関わらず、またDL/サブスクに関わらず全曲「2022 mix」という表記があります。

    CDのパッケージや歌詞カードには「2022 mix」という表記はありませんが、タイトルステッカーに「最新2022年ミックスに」という表記があります。

    キョードー西日本のサイトの掲載記事(公開終了)によると下枠内の作業を総称して「2022 mix」と呼んでいるという記載があります。

1)UP MIX」→2mix 音源をリマスタリング
2)
REMIX」→オリジナルマルチデータから新たに REMIX
3)
SWEET」→松任谷正隆がオリジナルマルチの音源を一部差し替え(この作業を“sweetning“と呼ぶ)REMIX
※上記作業を経た後全曲 Dolby Atmos

上記作業の境界線は非常に曖昧であり、明確に楽曲ごとに区別できるものではありません。

    リットーベースのYoutubeチャンネルで放送された本作試聴会では、エンジニアのGOH氏よりリミックス31曲くらい、音源差替え11曲くらいという発言があります。

   上図は「2022 mix」について、キョードー西日本のサイトの掲載記事(公開終了・内容は上記白枠内)を参考にしています。

   当サイトでは、これまでの当サイトでのリミックス解釈に照らし合わせ、本作においては2) REMIX3) SWEETをリミックスとして解釈することにします。

   Dolby Atmos音源については、発売時現在Apple Musicのサブスクリプションサービスでのみ提供されています
(Dolby Atmos
に対応しているサービスであってもApple Music以外では提供されていません)
再生ハード側の設定によりDolby Atmos用の音源が配信されます。設定されていない場合は2MIXが配信されるようです。
iPad
iPhoneといった2chシステムへはDolby Atmos 用の2ch音源(2MIXとは音の定位が異なります)が配信されるようです。
AppleTV4K
のようなマルチスピーカー対応デコーダーへはマルチchデータが配信され(ch分が配信されているかは不明)
デコーダー側で接続されたシステムに応じてダウンミックスされるようです。

    このページの情報は、当サイトでの聴き比べによる判断であり、制作側の実作業に基づいたものではありません。
また、「リミックス」という表記も当サイト独自の判断条件に基づいたもので、公式に示されたものではありません。他サイトへの転載はしないようお願いします

 

 

 

 

 

聴き比べ[1]CDにおける既存音源との違い

 

 

[ミックス違い]

 

グラフ, ウォーターフォール図

自動的に生成された説明

 

CDに収録されている楽曲のうち、既存音源と上図2)3)を経たと思われる音源との違いをまとめました。

なお、実際に聴き比べているのは赤い矢印の部分ですが、違いを見つけたいのは青い矢印の部分です。

下記のような違いはひとまず除外しています。

・音がパワフル ・音がきらびやか ・音に広がりがある ・ボーカルがクリア ・残響がついた/なくなった ・低域が強い

理由としては、こういった全体的な音色に関する違いは、(もちろんミックスによって発生することも十分に考えられますが、)

マスタリングの効果かもしれませんし、再生する機材によってその効果がより大きく出る場合もあるからです。

また、生理的な理由(耳がある音に敏感/鈍感)、心理的な理由(気のせい、音量が大きいと良い音に聴こえるとか)によっても違うと感じることがあるからです。

※ 表中の「オリジナル」が何かはあまり気にしないでください。近年のベストか、オリジナルアルバムです。

※ 歌詞の漢字やかな、楽器名、奏法名は、テキトーです。

※ 違う度 ★★★すぐに分る ★★オリジナルを聴きこんでいれば気づく ★あえて探さないと見つからない

※ 表中のハイパーリンクは公式Youtubeにアップされた曲の該当部分へリンクしています。[40th]は同じく「日本の恋と、ユーミンと。」の該当個所へリンクしています。

なんとSpotify聴き比べ用のプレイリストを作ってくださっている方がいらっしゃいます。ありがたや〜!

Spotifyでは、本作以外の既存音源は2018年マスタリング音源が配信されているようです。

 

 

違う度

分りやすい違い

イントロ付近の違い

1-1.

真夏の夜の夢

★★

 

出だしのスネアの音が明らかに違う ラテン系の音に [40th]

1-2.

中央フリーウェイ

♪瞬きだす のあとにギター追加  [40th]

間奏のギターの定位 [40th]

ドラムの定位、ビブラスラップの定位   [40th]

1-3.

ダンデライオン

♪風にのり と一緒にあったハープがない  [40th]

歌い出しのハープが小さい  [40th]

1-4.

ひこうき雲

♪ゆらゆらかげろうが のハモンドの音量が小さい  [40th]

♪けれど幸せ のストリングスの定位  [40th]

 

1-5.

緑の町に舞い降りて

 

 

 

1-6.

青春のリグレット

★★

 

スネア差替え 

 [40th] オリジナルはいかにも80年代の"残響かけてバッサリ音"

ベースとキーの音量バランス  [40th]

1-7.

DOWNTOWN BOY

♪取り継がないの あとにシンセ追加  [40th]

イントロにうっすらパーカスが追加されている  [40th]

1-8.

瞳を閉じて

 

 

 

1-9.

卒業写真

間奏のギターがより左側にミックされており、
右のパーカスの音量も違う
 [40th]

 

1-10.

最後の春休み

 

 

 

1-11.

リフレインが叫んでる

★★★

♪走る時刻 のあとの効果音が違う  [40th]

出だしのシンセが明らかに違う  [40th]

1-12.

よそゆき顔で

 

 

 

1-13.

輪舞曲(ロンド)

♪喜びとは溶けて落ちる のマラカスがない 

 

1-14.

サーフ天国、スキー天国

 

 

 

1-15.

海を見ていた午後

★★

♪あなたを思いだす が別ボーカル  [40th]

イントロの左右トレモロ感がない  [40th]

1-16.

情熱に届かない

★★★

♪快速電車を見送った のギターの音量バランスと定位 

最後のサビあたりからヴォーカルがどんどん走り始めるがミス??

出だしにドラム追加 イントロにストリングス追加 

1-17.

カンナ8号線

 

 

 

2-1.

Hello, my friend

★★

サビにコーラスを大幅に追加  [40th]

甲高いスネアの音を低いものに差替え  [40th]

 

2-2.

やさしさに包まれたなら

 ♪すべてのことは にコーラス追加  [40th]

 

2-3.

5cmの向う岸

 

 

 

2-4.

ダイアモンドダストが消えぬまに

★★★

♪苦しいのよ今も のあとの♪ウーがない  [40th]

ドラムの差替え 

 [40th]  オリジナルはいかにも80年代の"残響かけてバッサリ音"

2-5.

恋人がサンタクロース

♪おねえさんは とともにストリングス追加  [40th]

オリジナルは2回目のAメロからストリングスが入る

間奏のベースのチョッパーっぽい演奏が大きい  [40th]

 

2-6.

WANDERERS

★★★

 

イントロから明らかに音が違う  [40th]

2-7.

シンデレラ・エクスプレス

 

 

 

2-8.

ノーサイド

 

イントロ終りのキラキラ音の定位が違う  [40th]

2-9.

ダンスのように抱き寄せたい

 

 

 

2-10.

DESTINY

♪冷たくされていつかは の右chのギターが静かに  [40th]

♪今日わかった のビブラスラップの定位  [40th]

ミックスが空間広めのバランスに(巧く言えないが)  [40th]

2-11.

満月のフォーチュン

★★

Aメロ以降のドラム音差替え、軽い音に変えている 

出だしの残響音の差替え、残響抑えめ 

2-12.

消灯飛行

 

 

 

 2-13.

ホライズンを追いかけて

 

 

 

2-14.

星空の誘惑

 

 

 

 2-15.

セシルの週末

 

 

 

 2-16.

花紀行

 

 

 

2-17.

春よ、来い

サビの鈴が左右順番に定位  オリジナルはずっとセンター

イントロのハープ音強め 

3-1.

Valentine's RADIO

★★

全体的にドラムの音を差替え 

ベースのチョッパー的な音が目立つ  

 

3-2.

真珠のピアス

 

 ベース、ドラムの音量が大きい  [40th]

3-3.

翳りゆく部屋

★★

 ♪窓辺に置いた のベースを低減  [40th]

オリジナルは改めて聴くとボーカルとベース以外逆相じゃないかというほど量感がない、かなり変なMIX。当時なりの空間サウンドを模索したのか??

 

3-4.

SWEET DREAMS

★★★

 

ドラムの音、フレーズ変更  [40th]

3-5.

潮風にちぎれて

 

 

 

3-6.

Forgiveness

 

 

 

3-7.

冬の終り

 

 

 

3-8.

あの日にかえりたい

Aメロの左chにあったシェーカー削除  [40th]

2cho Aメロ左chハイハットのチッチチッチ追加  [40th]

 

3-9.

ルージュの伝言

 

 

 

3-10.

埠頭を渡る風

 

 

 

 3-11.

ベルベット・イースター

サビのボーカルが左右に分離している   [40th]

オリジナルはほぼセンターに

 

3-12.

VOYAGER 〜日付のない墓標〜

★★★

 

イントロのシンセの音が違う 

3-13.

守ってあげたい

 サビのボーカルが左右に分離  [40th] オリジナルはほぼセンターに

コーラスの定位がセンターに   [40th]

3-14.

宇宙図書館

 

 

 

 3-15.

ANNIVERSARY

★★

♪明日を信じてる からの80年代残響バッサリドラムを軽い音に差替え  [40th]

 

3-16.

青いエアメイル

間奏のアコギの定位が違う。  [40th]

FMで聴いた時は

 もっと明らかな違いがあったような気がするが...

♪青いエアメイルが と同時に右chでなっていたコッココという音がない  [40th]

 

                                                        他にお気づきの方はぜひフォームから教えてください。

 

グレーアウトした曲はオリジナルと同じミックスだという解釈ですが、下記の2つの理由からそうではない可能性もあります。

1つはもちろん管理人が見つけられていないケースですが、もう1つはオリジナルのミックス過程が完全に再現されているケースです。

後者を簡単に説明しますと下記のような感じ。 

 

 

グラフィカル ユーザー インターフェイス が含まれている画像

自動的に生成された説明

ミックスは単純に表現すると上図のように複数のトラック(Tr)を重ねてL,R2トラックにする作業です。上図の青いトラックがマルチテープの段階で、L,R2MIX音源です。各トラックによってL,Rに渡す音量が違います。同じ音量で渡せばそのトラックはL,Rの真中に定位しますし、Rにだけ大きく渡せば、そのトラックは右に寄ります。(実際は音量だけではなく、コンプやエコーのかかり具合などもここで調整され、単純な左右だけでない音の空間が出来上がるようです)。ちなみに、マルチのトラック数は、上図では5トラックしかありませんが、73年の「ひこうき雲」では16トラック、84年「NO SIDE」は24トラックが数本連動で使われ(連動のための信号もTr1本に記録されているそうです)、92年の「Tears Reasons」の段階では1曲につき100トラック近くもあったそうです。

グラフィカル ユーザー インターフェイス が含まれている画像

自動的に生成された説明

これが曲の進行に伴い刻々変えられてゆく感じです。

 

  グラフ が含まれている画像

自動的に生成された説明

この黄色い部分の過程が変わること(図ではオレンジで表現しています)を当サイトでは「ミックス違い」ということにしていますが、仮にTr1に何か処理を施した場合(例えばノイズを取るとか)、ミックスしなおすことになるのですが、素人考えでは人の手でオリジナルとそっくりにミックスするのは難しいのではないかと思えてしまいます。スープで例えるなら、レシピのないスープを飲んで、どの素材がどのくらいの量でどんな順序で混ざっているかを舌で分解し、良くなった素材を使って再度同じように新スープを作ってゆく感じでしょうか。

 

図形, 矢印

自動的に生成された説明

 

 

ところが、仮にこのミックス過程がすべて記録されており、機械的に再現できるとしたら、マルチのTr単位で処理を加えたとしても、完全にオリジナルのミックスを再現できることになります。極端なイメージですが、デジタルコピーしたマルチを再生するだけでサクサクとソフト上で自動的にミックスが再現されてゆく感じ。「ユーミン万歳!」ではトラックごとにノイズを取り除いたという説明がされており、この場合リミックスせざるをえないのですが、オリジナルと完全に同じミックス過程を施せるなら、2MIX後の音源を聴いてリミックスされたかどうかを判断することは難しくなりますし、全曲にこれが施されているなら、やはり全曲リミックスです。ちなみに83年「REINCARNATION」ではじめてコンピュータの支援を受けたミックスが行われており、その過程が記録され始めていたのかもしれません。一方で「万歳!」ではスタッフがトラックを11本聴いて確認する作業も行われたようで、これは逆にミックス過程が全く記録されていなかったためかもしれません。

 

[マスタリングによる違い]

 

グラフ, ウォーターフォール図

自動的に生成された説明

 

 上表内に明記が無いものは1) UP MIXを得たものと解釈します。

この違いについはこちらの、対象曲が含まれるオリジナルアルバムのページ内で聴き比べを紹介しています。

 

 

 

 

 

 

 

聴き比べ[2] : 同じ曲の2MIXDolby Atmos 2chMIXの違い

 

 

グラフ

中程度の精度で自動的に生成された説明

 

従来の2MIX(ステレオ)Dolby Atmos2chMIXとの違いを聴き比べてみます。

従来の2MIX(ステレオ)Dolby Atmos2chMIXは同じ2chでもその2chに至る過程や方針が違います。

ただし、後者はあくまで前者のMIXに基づいて作られているようで、前者に全く存在しない音が後者に存在したりはしませんし、左にあったものが右にあるような大きな違いもないようです。

Dolby Atmosを聴くには不完全な環境(このページの最下部にシステムを書いています)での聴き比べですが、両者の聴こえ方の違いは歴然でした。

ヘッドホンで聴くと、2MIXは頭の中に音が定位し頭の中が音で満たされる感じですが、Dolby Atmosは頭の外側に定位する感じ。

ヘッドホンで聴いた場合のCall me backのイントロを絵で描くと^^;こんなイメージです(感じ方、表現の仕方は人それぞれということで、ご勘弁)。

   

2MIXで頭の中いっぱいに広がっていたギターの音が、Atmosでは頭の外・前方に移動する感じ。

この移動によって、頭の中に残された左側の♪テッテテンとなってるギターが一気に存在感増します(音色も少し変わって聴こえます)

頭いっぱいに満たされた感じはなくなってしまいますが、良く言うなら圧迫感がなく自然な感じでしょうか。

2MIXでは音を重ねて盛って表現していたものが、Atmosでは外に配置してゆく感じ・・・全く違う発想で音作りしないといけないのではないか?と思います。

  

「翳りゆく部屋」の ♪二人の言葉はあてもなく のあたりのイメージ

    

       Youtubeで聴いてみる                Youtubeで聴いてみる

[1]のオリジナルとの聴き比べも入りますが、今回リミックスの効果が顕著なのが「翳りゆく部屋」です。

オリジナルは当時の音作りの作法や流行りを知らない身で言うと、けっこう酷い音で、残響を付け過ぎた結果、特定の周波数帯域で色づけがされてしまっており、

ボーカルに芯がなく手で口を囲ったようなラッパ音、それにディストーションかけたようでギターっぽい、なのでやたらうるさいギターと潰しあってる感じがします。

教会で録ったパイプオルガンに合わせてスタジオの方の音作りも教会っぽくしたかったのかもしれませんし、

ディストーショナブル(?)な音は、まだ録音クオリティの悪かった60年代後半のロックっぽい音作りにしたかったのかもしれません。

(こういう聴き比べをやっていると、つい木を見て森を見ず的な見解に陥りがちですね。)

ユーミン万歳!2MIXは一変!!ボーカルがかなりクリアですし、オリジナルではどこ行った?という感じの低域がドッシリ真ん中にいて安心感がある。

何よりコーラスの分離がしっかりしていて、驚きました。Dolby Atmosの場合、これがより顕著で、「こことここに居る感じ」と指させるぐらい。

ただ、Atmosはユーミンのボーカルの歪みがけっこう気になって、歪みが存在感にもなっているのですが、気になりだすとちょっとしんどいかなという感じがします。

絵はどれがどの音かは書きませんが、右の図のオレンジの真ん中の白はこの歪みをハレーションの感じで描いてみました。

(・・・この絵にするというのは、やっててもう、、かなりムリがあるなと思いました^^;)

 

もっと顕著にイントロから違いを感じてみたという場合はWANDERERSがお勧めです。

イントロ一発目のドッドドッドドッドドッドという音の音色から違っていますし、各音の前後の配置具合も2MIXとは違います。

こういう人工的な音をミックスした曲はわかりやすいですね。

 

また、2MIXDolby Atmos交互に聴き比べていると、どうしても明確に音を認識したいという欲求から、量感のある2MIXが良く聴こえてしまいます。

上述の通り、両者は音作りの考え方が全く異なるため、本来同じ土俵で聴き比べるべきものではないのかもしれません。

Dolby Atmosのほうもしばらくこればかり聴いていると満足な量感に感じてきます。

また、Dolby Atmosのほうはヴォーカルが少しノイジーに歪んで聴こえます。だから空間の中で目立つというか浮いてられる感じはあるのですが、

これはこのシステムの課題なのかもしれません。

  

 

 

これはDolby Atmosの開発者やコンテンツの制作者に聞いた話ではなく、あくまで管理人の見解ですが、

ヘッドフォンなどの2chでこのイマーシブ感というか、空間感、配置感、・・・を十分に感じるには程よい音量であることが重要な気がしています。

空間オーディオは人工的な物とは言え、最終的には普段われわれが自然に音の方向感を聴き分けている仕組みを利用しているはずです。

斜め後ろから音を聴かせたいなら、斜め後ろから音が来た場合に両耳が聴く音量差や位相差を周波数ごとに人工的に作りだして聴かせて、謂わば脳を騙す、

そうすると実際は耳の傍のヘッドフォンから音が出ているのに、脳は斜め後ろから来た音だと錯覚するわけです。

こう考えると当たり前ですが、音量を上げると音が近いと感じるわけですから、制作者が意図した配置から音が近くにずれてしまうことになります。

単純に近づいてきてくれればいいのですが、音が近くになったからといってそれに合わせて位相差が変わってくれるわけではないので、

音量差と位相差がちぐはぐになると思うんですよね。そうなると脳を上手く騙せなくなる。

(さすがにリスナーのボリューム情報をサーバーに送って、それに見合った位相差に作り直した音を送るなんてことはしてないでしょう・・・。)

ですからあまり音量を上げてしまうと空間感や配置感を感じにくくなるかもしれません。これはバイノーラル録音なんかを聴くときも同じです。

空間オーディオって言うけど実はいまいち何も感じないなという方は許せる範囲で音量を下げて聴いてみると良いのかもしれません。

 

Dolby Atmosは音を空間のどこに配置するかという情報をマスターとして配信元で持っているそうで、

本来はマルチチャンネルでそれを受信し、複数のスピーカーを部屋に配置して再生します。

これらが部屋の中でブレンドされ、そのブレンドから2つある耳が音を2つ拾って最終的に人体で2chに至ります。謂わば、部屋がミックスダウンをしてくれているようなものです。

Dolby Atmos2chはスピーカーを部屋に複数は置けない人のために、この部屋がやるであろうミックスダウンを事前に機械側でシミュレートして、

2chにしてから配信する、それを直接イヤホンやヘッドホンをとおして耳に届けるというようなものではないかと想像します。

(さすがにiPadiPhoneでマルチチャンネルで受信する意味はないだろうということでこう考えています。) 

ちなみにAppleTV4Kをベースにマルチスピーカー環境でDolby Atmos聴いている知人からは、「ユーミン万歳!」がものすごい情報量のえげつないコンテンツだと聞いています。

これは、AirPodsProであれMAXであれ、2ch環境では絶対再現しきれない!って。・・・・う、うらやましい〜!!

 

なお、空間オーディオと聞くと、ついこういうもの( Youtubeへのリンク)も期待してしまいます。ヘッドホンで聴くととてもリアルに音が頭の周りを回ります。

ステレオ音源でもここまで出来てしまうというのがテクノロジーと人の聴覚の面白いところです。

ただ、ここまで来ると音楽と言うよりは、効果音的;ただ音をぐるぐる回すことを面白がってる気がして、もはや2MIX時の製作者の意図はどっかに行ってしまっている感じですね。

「ユーミン万歳!」のDolby Atmos版はこういう飛び道具的なものではなく、2MIXの響きをより自然にしたという感じではないでしょうか。

一方で、2MIXDolby Atmos化ではなく、最初からこういう全方向に音を置いた、空間オーディオ用のまったく新しい概念の音楽作品を聴いてみたいとも思いました。

 

「ウンド&レコーディング」202110月号では「空間オーディオの潮流」と題してDolby Atmosの特集が組まれており、

これまでの歩みやレンダラーのGUI、ミックススタジオの様子などの他、本作を手掛けることになるGOH HOTODA氏のインタビューも掲載。

サンレコアーカイブスの該当ページへの直接リンク

 

 

 

 

 

 

 

 

聴き比べ[3] : CDと配信の2MIX間にも違いがあるだろうか?

 

 

本作収録音源の2MIX間でも何か違いがないか調べてみました。

グラフ, ウォーターフォール図

自動的に生成された説明

 

比較は対象下記の通り

 @ CD音源 (iTunesWAV 16bit/44.1kHzに変換)

 A ロスレス音源 (OTOTOYより購入, WAV 16bit/44.1kHz)

 B AAC 320kbps (moraより購入、AAC 16bit/44.1kHz相当、iTunesWAV 16bit/44.1kHzに変換)

 C ハイレゾ音源 (OTOTOYより購入, WAV 24bit/96kHz)

曲はやはり「Call me back」です。

  

ロスレス

圧縮

ハイレゾ

DL

A OTOTOY

B mora

 

C OTOTOY

 

ストリーミング

 

 

 

 

「配信」とひとことで言っても、少なくとも上記の6形態が存在しています。

当サイトではDLできるものを聴き比べていますが、6形態全てを聴き比べているわけではありません。

また、各配信サービスでどれが提供されているのか、いまいちはっきりしないのが現状です。

 

  

波形と聴感を比較しました。当サイトの結論としては、

    各音源@ABCはミックスによる違いは無いように思います。

    波形(マスタリング後の音源ということになるのでしょうか)は@ABは恐らく同じ、
Cのみ他と異なっているようです。 

 

@Aは、数値的には完全一致、

Bは圧縮しているため数値は異なりますが、ほぼ@Aと同じ傾向にあります。聴感上も違い分からず。

Cは音量分布が異なっており、ハイレゾの方が最大と平均の差が広い
 (そのせいで単純に聴き比べるとCのほうが少し小さく聴こえます)

 聴感上の音色も異なっており「Call me back」の場合、少しだけ響きがあり柔らかい音に聴こえます。

 

波形の正確な比較のために、@に対し他の波形を上下反転させたもの(INV[]と表記します)をミックスしてみました(@+INV[]と表記します)

波形が同じであれば、ミックス後、波形が消えてしまいます。例えば @ + INV[@] をすると波形が消えます。

分りにくいという方は、@+INV[] = @−○ だと考えてください。同じだったら @ー@ = 0になるので、消えちゃう、消えなかったら同じではないという感じです。

 

@+INV[A]は無音になります。微妙に音量出てますが、平均音量の-104dB16bit=96dBなので記録できる最低音量領域です(・・・なんで測定出来てるんだ??)

@+INV[B]AACにするときに圧縮し削られたデータが差分として出てきています。聴感上はシャワシャワした音漏れのような感じになります。平均-44dBというのは意外と大きな音ですね。

@+INV[C]は別音源といっていいでしょう。少なくともマスタリングが違うようです。このデータですが、普通に音楽として聴けることが意外でした。

ちなみにこれは、データ量の違いではなく、あくまで音色の違いが差分となって出てきています(データ量は揃えてミックスしています)。

 

おすすめの聴き比べ方法

 

先にデータを見に行ってしまいましたが、聴き比べについてもおすすめの方法と共に載せておきます。

マスタリング違いの聴き比べは、ミックス違いの効き比べより難しいかもしれません。パッと聴いて何か違うぞと感じると、より細かく分解的に聴いて違いを見つけようとするものです。

ところが、ミックス違いと異なり、マスタリングは違ったとしても基本的に各音の定位は同じなので、ディティールを聴き比べていこうとすればするほど、違いが分からなくなってきたりします。

最初の「パッと聴いて違う」と感じたときが一番違いを感じられているのかもしれません。

また、ABを聴き比べる場合、Aを止めてBを再生する間に、たいていAがどんな音だったか忘れてしまいますよね。

そこで、もっと音源を直感的・全体的に比較でき、止めることなく連続的に聴き比べられる方法を考えてみました。

 

テーブル

中程度の精度で自動的に生成された説明

左図は「真夏の夜の夢」の波形で、上が@CD音源、下がCハイレゾ音源です。

10秒ごとに@とCがテレコに間引いてあり、これをミックスした音源を作りそれを聴きます。要は、ノンストップでどんどん@Cを入れ替えながら、シームレスにマスタリングが変わるときの微妙な違和感を感じようという算段です。(左図は1曲丸ごとやっていますが、@Cの同じ個所を繰り返し繋いでもよいかもしれません。

 

聞いた感じでは、@CDとCハイレゾは18リマスターと19リマスターほどは違いが無いように思います。@CDのほうはボーカルがやや歪みっぽくて輪郭がはっきりしている感じ(歪みと言っても割れてるとかではなく、表面がギラっとした感じでしょうか。イメージとしては表面に小さなブツブツのある金属という感じ。)。ハイレゾのほうはもっとソフトな感じで、相対的に低域が多いように感じます。

 

面白いのはボーカルで音量を揃えようとしても揃わないというか、ハイレゾのほうを大きくしてもCDのボーカルのほうが目立つんですよね。良く言えばしっかり知覚できる、悪く言えば耳につく、という感じがします。 

 

ちなみに、この波形を作るために使用したのはAudacityというソフトウェアです。実は私としては初マルチトラック編集でしたがすごく簡単で、今まで机たたいてリズム合わせながらワントラックで編集していたのは本当に時間の無駄でした()

 

ただし、この聴き比べ方では2者のギャップが強く印象に残ってしまいます。

他方、マスタリングの違いは長時間聴いたときに掴める雰囲気の違いだったりもします。アルバムを1枚程度聴いてみて持てる印象の違いという感じです。

これはスイッチして比べてしまうと、その断面の違いしかわからないため、この違いを認識するには両者を長時間聴いてみるしかありません。

 

 

 

 

 

 

聴き比べ[4] : CDLP2MIX間の違い

 

 

LPは構成的には2MIXの一つなので、聴き比べ[3]のひとつとして触れたほうが収まりは良いのですが、下記の事情から独立させました。

   リリースは他のものよりも後だったこと

   CDLPのメディアによる音質の差が大きそうであること

   加えて、プレーヤーの違いに音質がかなり左右されること(下記の聴き比べはあくまで私の環境での話と捉えてください)

   単純にCD用のマスターとは別にLP用のマスタリングが行われたこと(公式に案内がありました)

   一部の曲はCDとは別にリミックスされている可能性があること(公式情報ではなく、当サイトの憶測です)
なお、聴き比べ[1]で”既存”音源とCDのミックス違いを聴き比べていますが、更にCDLPでミックスが違う場合、”既存”を含め3種のミックスがあることになります。
(”既存”とLPが同じであることはまず無いと思いますので)

 

出来るだけ、CDLPともにピックアップ以降の条件を揃えて聴き比べしています。

グラフィカル ユーザー インターフェイス, ダイアグラム, アプリケーション, Teams

自動的に生成された説明

SP(スピーカー)で聴ける環境がないため、ヘッドフォンで聴いております。

 メリットとしてはSPリスニングは相当良いモニターSPを用意しない限り、低域の正確な再生が難しいので、

音源比較はヘッドフォンのほうが比較的手軽に忠実性の高い音が聴けるのではないかなというところです。

 SPがしょぼい場合、CDがどう、LPがどうという以上に家庭の最後でSPが一気に音をしょぼくしてしまいます。

 また、部屋の影響(ある周波数に偏った残響など)を受けにくいのでやはり音源の聴き比べにはヘッドフォンが向いているかなと思います。

 SPと部屋は大きく音に色付けをしてしまうので、ヘッドフォンだとこれを回避できるわけです(ただ、ヘッドフォンも色付けはしてしまいますが)。

 デメリットとしては部屋の響きや音の減衰、左右のスピーカーの混ざりがないので、そこまでを想定した音作りだとしたとき、その体験が出来ないことです。

 またBOSEヘッドフォンは過去からやや低域を盛った周波数特性を持っているように思います。やはりモニタするならモニタ用のヘッドフォンが好ましいのでしょう。

・アナログもデジタル化して聴いています。

 これは、本当にアナログ体験するなら、アナログ過程のまま聴いたほうが良いと思いますが残念ながら環境がありません。。。

 ただ、これまで管理人自身が行ってきたほか音源のリスニングと同じ条件にそろえていることにはなるので、音源側の聴き比べとしては妥当かなと思います。

 ちなみにシステム(AMPSP)が異なると、音源の違いを聴き比べているのか、システムの違いを聴き比べているのか、判断できなくなるので、

 音源の聴き比べは出来るだけシステムを揃える必要があります。また、念のためファイル条件の違うWAVだけでなく、条件を揃えたAACでも聴いてみています。

 

あまり全体的な傾向みたいなことをいうのも無粋ですが、このLPCDよりも低域よりの音になっている曲が多いように思います。

中には雰囲気が変わるくらい低域が強調された曲もあり、当サイトではこれはミックス違いとしようかなと思っています。

一方でほとんどCDと変わらないような高低バランスの曲もあります。ですからやはり意図的にCDと高低バランスが変えられている曲があると言えると思います。

 

 

 

[3-1] マスタリングおよびメディアによる違い

 

グラフ, ウォーターフォール図

自動的に生成された説明

 

 まずはマスタリングよる違いを聴いてみますが、そもそもLP用のマスタリングはLPというメディアに適合させるために行われますので、メディアによる違いを含むものとします。

LPの物理的な制限によりLPにはCDほど低域や高域を大きく入れることが出来ないようです。

(これはこちらでも紹介する予定ですし、先のリットーベースのLP視聴会でもGOHさんが説明されていました。動画のこのあたりとかこのあたり。)

低域については相当低い20Hz40Hzとかのあたりの話になると思うので、普通CDにもここを大きく入れるということは稀だと思いますが、

高域のほうはかなり聴感上の音色に影響を与える帯域から違いがあるように感じます(測定はしてませんが8k以上の大人でもまぁまぁ聴こえるあたり)。

ですから00年代に入ってからほとんど経験が無いことですが、メディアが違うというだけで音質が違ってきます。これは全曲に跨る違いです。

ここでは、あまりに音が違うものを除いて、LPというメディアやそのためのマスタリングによる差に触れてみようと思います。

この差は曲によって違っているようなので、いくつかピックアップして感じたことを紹介してみたいと思います。

なお、演出上変えてきたなと思うものは書き[3-3]に分類しました。

 

「真夏の夜の夢」

この曲はかなりヴォーカルのエッジを活かして力強く録音されている曲の一つですが、CDに対しLPはかなり大人しい(捉え方によっては小さく暗い)音になっています。

CDと聴き比べるとかなりヴォーカルの遠さを感じます。エッジを持ってある意味無理やり前に出てきてたのが出来なくなった感じ。

またLPのほうは些細な音が聴き取りづらい。例えば ♪テキーラみたいなキスをして のあと「ウッ!」という声のような音が入っているのですが、

CDは聴き流していても聴き取れますが、LPのほうはあえて探さない限り聴きとることはできないのではないかと思います。

逆にLPの良さはこのエッジが弱いことで、ヴォーカルやチャンチャン鳴っている打楽器の歪み感がなく聴きやすいところです。

派手な縁取りがない感じがして、聴いていて忙しくないんですよね。

また、これらエッジによるマスクがないからか、LPの特性なのか、ベースあたりの低域の響きが非常に豊かに感じます。

大きいというわけではないのですがそこをつい追ってしまうような豊かさです。

それにCDに比べドラムの鈍器感というか破裂感も弱いのでこれもまた聴きやすい要素ですね。

ただ、すでに書いた通りこの曲の場合はCDとスイッチして聴いてしまうとLPはどうしてもヴォーカルが遠く暗くヌケ悪くという感じがします。

当初、このLPセット全体の傾向かと思って心配したのですが、この曲と「Valentines RADIO」くらいですかね、

他の曲はそうでもないのでなぜこの2曲だけ?と思います。正直、この2曲は明らかにCDのほうが良いと感じました。

下記の[3-3]への分類という気もするのですが、積極的に高低バランスを変えたという感じがしないんですよね。こうなっちゃった的な感じがします。

 

「埠頭を渡る風」

前曲から一転、これはLP時代、アナログミックス時代の曲で、ヴォーカルはしっとりとしており、エッジレスな笛のような響きを持っています。

この曲は「真夏の夜の夢」の違いが噓か?聴き間違いか?というくらいCDと違いがないんですね。

恐らく元がアナログ過程で作られているので、そもそもアナログが苦手な範囲に音が少ないのではないかと思います。

楽曲の展開も、演奏もドラマチックで一見忙しい曲に思えるのですが、音的にはけっこう隙間というか余裕がある、

だからエッジが無くても丸い音のままヴォーカルを前に出したりコントロールできた感じで、こういうのがLPには向いてるんだろうなと思います。

「埠頭を渡る風」のLPの良さとしては音量を上げてもある程度まとまった音で聴ける点でしょうか。

やはりCDのほうが高域が担うエア感はちゃんと収録・再生できている気がして、冬の沿岸沿いの感じってCDのほうが再現性高いのですが、

音量を上げるとこのエア感も上がってきて、なんだかバランスが崩れるんですよね。やたら寒くなるというか、日本海側の厳しさが出てくる感じ。

少ないとはいえ、ヴォーカルや楽器のエッジ感も目立ってきて海風が頬を切るような痛々しい感じになってくる。

その点LPは音量を上げても寒い海岸沿いとはいえ車の中の緩いカーブであなたに倒れる余裕ある感じを保てている気がします。

当初、この頃の曲だからCDと同じようにLPに収まったのだと思っていましたが、あまり関係なく大部分の曲はだいたいCDと同じような音で収められているのではないかと思いますし、

違いがあるとしたら、それこそメディアとそのためのマスタリングの違いなのではないかと思います。

 

Hello, my friend

この曲もだいたいCDと同じような音で収録されています。CD時代の曲ですがLP化の好例かもしれません。

「万歳!」のCDはやたらとヴォーカルのエッジがきつくて、「万歳!」ではユーミンの声による多重コーラスが追加されてるのですが、これもなんとも人工的で。

音を言葉や絵で説明するのにはそもそも限界がありますが、私が言いたい「エッジ」というのはちょっと歪んだ感じにして輪郭を出すようなイメージです。

ロゴ が含まれている画像

自動的に生成された説明

上図左の緑がオケで青い丸がヴォーカルだとしたら、右のように白い縁取りをつける感じ。これを歪みでやってるような感じがするのです(あくまで私の聴感です)。

これすると、確かにヴォーカルがくっきりしますし、悪い環境で聴いたとしてもクリアな印象にはなると思います。

ただ、音量を上げるとこの白が痛く耳につくし、何より白に注目が行っちゃって中の青感を感じにくくなるんですよね。

この曲の場合、オリジナルや18リマスターはこのエッジ要素があまりないのですが、19リマスターや「万歳!」はエッジがあって、

ここがもしかしたらGOHさんのエンジニアとくにリミキサーとしての個性というか腕の見せ所なのかもしれませんが、

曲によっては元からあった曲の個性や雰囲気が削がれてしまう気がします。

LPはここを良い塩梅で削ってくれている、クリアさを残しつつもエッジエッジしない感じにしてくれている気がします。

ユーミンの多重コーラスはもとからあまりキレイじゃないというか、どちらかというとアクセント楽器として使われてきた感じですが()

LPだとやはり丸くなっていて、あぁコーラスだなぁという感じがします。

 

「冬の終り」

 この曲もCDとそこまで大きくは印象が変わらないのですが、聴いてぱっと耳が行くのはベースの柔らかさです。

実はベースなのか、バスドラのキック音なのか私はよくわからないのですが、

イントロからある低いボイーンとした音ですね、このアタックがCDはすごく肉厚なのですが、LPは薄生地という感じで、

これも上の「Hello, my friend」と構造的には同じ話で、アタックが薄い分中身のボイーンがよく聴ける感じがします。

実は、CDとハイレゾ配信版にも同じような違いがあって、ということはちょっとLPとハイレゾはこの点が似ているのかもしれません。

ヴォーカルはCDより更にくっきりした感じはありますが、内周に近く少しカサカサし始めてる感じもします。

  

「あの日にかえりたい」

 この曲はCDはリバーブきつめですが、LPはすごく抑えられているように感じます。

内周曲なので歪まないように抑えているのか、かかってはいるけどやはり内周なので位相がずれたりしてあまりリアルに感じられないのかもしれません。

でも内周ですがジャリジャリ歪みやカサカサ感ははほぼ無いですね。

CDはリバーブやはっきりした音でフレッシュ感があり、LPはまるく落ち着いた音、それぞれ両者の典型のような音だと思います。

 

 

 

[3-2] ミックスによる違い (ただしLPのみに収録されている楽曲)

 

グラフ, ウォーターフォール図

自動的に生成された説明

 

 DISC 6に収録されている楽曲についてです。これはそもそも万歳!CDに比較対象が収録されていないため、”既存”音源(万歳!より前にあった音源)との比較になります。

ですから実は 聴き比べ[1] に相当するのですが、ややこしいのでこちらに書いておきます。

 

 

 

違う度

分りやすい違い

イントロ付近の違い

BT-1.

ダイアモンドダストが消えぬに

★★★

 これは当サイトではほぼアレンジ違いみたいなものでしょう

 

 BT-2.

BLIZZARD

★★

大サビのEWIっぽい音が大きい

イントロに音が足してある 

BT-3.

14番目の月

★★

全体的にスタジオライヴっぽいミックスに

ドラムの定位が違う

BT-4.

COBALT HOUR

★★

間奏がドラム&パーカスを重心においたミックスに

chのギターの定位

BT-5.

少しだけ片想い

★★

全体的にドラムを重心に置いたミックスに

 

 BT-6.

12月の雨

エンディングで♪ニュ〜っという音を大きくミックス

 

BT-7.

Autumn Park

ヴォーカルがアラーム的エフェクトから解放されて生々しく

全曲当サイトで言うところの「リミックス」と言えると思います。

BT-1は万歳!ミックスから音を抜いたり足したりしたロングヴァージョン。昔、海外アーティストが7”を切った後に更に12inchを出していましたがそこに収録されていそうな感じ。

楽曲の時間的な構成が変わっているので当サイトでは「アレンジ違い」ということにするかもしれません。

BT-2はオリジナルの雰囲気を活かしていろいろと音を足して少しギラっとした印象のミックスになっています。

BT-3は全体的に響きのある空間でそのまま録音・ミックスしているかのよう。私には昔FMでやっていたスタジオライヴ風に聴こえます。

一見(一聴)雑に見えるヴォーカルのレベル調整もスタジオライヴ感醸していますね。オリジナルの気の抜けた残念ロックな感じを逆手に活かした感じで面白いです。

BT-4は低音重視なミックスに。オリジナルは普通はこんなミックスしないだろうというくらい低音が薄く、でもそれがこの曲のらしさだったりもするので・・・。

重心の低いまともなミックスにした分、らしさを削いでしまった印象があります。まぁ曲よりも演奏という方、あるいはティンパンアレイを語りたい方にとっては都合の良い音源かも。

BT-5もオリジナルはBT-4と同じアルバムに収録されているので軽いのですが、やはり低域重視なミックスになっています。

ですが、BT-4と違い割とスタンダードな曲なのでこの曲は単純にこうして正解だと思いました。

BT-6はオリジナルに倣った高低バランスで、少し聴いただけではミックスの違いに気付かないかもしれません。

BT-7はこのミックス独自の編曲にあたるような変化は少ないので★にしていますが、ヴォーカルがかなりくっきりしているので実は気づきやすいと思います。

オリジナルはアルバム全体の雰囲気のためにややヴォーカルがオケのリバーブに埋もれるようなミックスがされていましたが、このミックスはそれ関係なくといった感じ。

同じ「アラームアラモード」に収録された「パジャマにレインコート」のシングルとアルバムの違いに似ているかもしれません。

こういうオリジナルアルバムに関係なくリミックスで曲の真骨頂出す感じはベスト盤ならではの面白さですね。

 

 

 

[3-3] ミックスによる違い (万歳!CDと万歳!LPとで違っているもの)

 

グラフ

自動的に生成された説明

 

LPCDとマスタリングが異なるのは上述のとおりですが、更にミックスも違うんじゃないか?という曲です。

下図の青い矢印のところの違いに着目しています。

もちろんですが、当サイトではこのあたりの事実はわからず、赤い矢印の違いから青い矢印の違いを推測するしかないという感じです。

演出上の違いを意図せずに、LPに上手く刻むためにミックスしなおしたなら、もうそれはマスタリングの違いとしてしまっても良いように思うのですが、

結果的に曲の印象を大きく変えているのなら、やはりマスタリングとは別のミックス違いという分類にしても良いかなと思っています。

万歳!でリミックスされた曲が更に低域重視にリミックスされているというケースが多いように感じます。

(ただ、ドスドス系のリミックス曲が全部そうかというわけではなく、CDと似たバランスのままの曲もあります。例えば「リフレイン〜」「ダイアモンドダスト〜」など。)

正直、私にはなんでこんなバランスにしたんだろう?と疑問に思う曲が多いので、ちょっとネガ色強めなレビューになるかもしれません。

発売間もないですし、丁寧に作られてるのは承知してるので恐縮ですが、まぁこういうサイトをやる以上、良ければよいと書いて、良くなければよくないと書きたいので。。。

 

「青春のリグレット」

イントロからベースがかなり大きくミックスされているようです。CDがけっこう淡白な感じだったので、ちょっと低域で補強したという印象ですね。

この曲はオリジナルは結構音がスカスカなのですが、そこがバスが出ていった感じや、ポッカリと心が空いた感じが出てて良かったんですけどね。

発売から2年たったから言いますが、私は万歳!のドラムを差し替えたリミックスは曲の空気感や感情が削がれている気がして好きになれないんですよね。。。

昔「人体の不思議展」というのがあって、献体から水分を抜いて代わりに樹脂を入れて、要は本物の人体を標本にして展示するイベントがあったのですが、そんなイメージです。

もちろん樹脂なので、形をずっととどめていますし、内部構造が見やすい・・・つまりくっきりしているのですが、やはり生々しくはないですよね。

万歳!差し替え系リミックスもくっきりはしてるんですけど、、、生々しくはないんですよね。ちょっと異様なものを見るエグみも人体の不思議展っぽい。

 

「輪舞曲」

低域が激盛りという感じ。音量を上げて聴くと大変窮屈な感じで、ヴォーカルが響くスペースがないような。。。ただし、小さな音量で聴くと意外とヴォーカルが通っていて不思議。
管理人的にはちょっと盛りすぎな感じがしますが、フロア用リミックスという感じですかね。タイムマシンツアーも会場で聴く音はこんな感じだったかもしれません。

  

「情熱に届かない」

この曲も低域増しのパターンですが、寄っているどころではなく、もうアレンジとして低域ベースに作られている感じがします。

サビの部分、CDは主にヴォーカルとデュデュデュデュデュンという音の高域で形作られている感じですが、どうも失速感あってノリが悪い。

「ドーンパープル」のオリジナルMIXもかなり高域寄りに作っていますが、機械っぽい音で速いリズムを打ってけっこう強引にノリ良くしている感じ。

予想ですが、万歳!に入れるにあたって、また”アンチ・シンクラヴィア”の一環で、これが嫌だってことになったんでしょうね・・・。

結果的にリズムを率先していた音が小さくなり、CDはちょっと腑抜けてしまった()感じがしていました。

LPはドラムを大きくして低域でリズム取りに来てる感じです。私はこっちのほうがずいぶん満足感ありますね。

更に良かったのは、この曲の万歳!MIXは大さびのところでヴォーカルが不自然に走り出すのですが、低域にリズムの主導が移ってそこがあまり気にならなくなったところです。

これと関係あるかは分かりませんが、この曲はヴォーカルの高域特性も演出的に落としているように感じます。

 

DESTINY

これも低域増しです。「DESTINY」の例えばイントロ部分はオリジナルの時点で結構音が厚く、面で音が展開されている感じ、悪く言うとちょっとのっぺりとした音なのですが、

万歳!CDでは少し低域系を引かせてメロディやティンパニっぽい音が目立つような、分解能高いミックスにかえられました。

ところがLPはオリジナル寄りにしてそこに更に低域足した感じで、ボワボワになってしまってるように感じます。

ただ、ヴォーカルはこの時期独特の笛系と呼んでますが、スッキリしつつ太さもあって、意外と低域に潰されてなく歌ものとして自然に聴けますね。

ちゃんと低域が背景になってるんですね。って背景になるのが良いのかどうか微妙なところですが、厚く柔らかな背景になっているように感じます。

 

「星空の誘惑」

これもブリっとしたベースの音を中心にかなり低域増強されています。

アルバム「REINCARNATION」はかなりリバーブに凝ったそうで、高域側にいろいろ工夫の痕跡があるのですが、ちょっと低域がおざなりになってる感じで、全体的に軽いんですよね。

この「星空の誘惑」のイントロをオリジナルから99年、18年、19年、万歳!と順番に聴いていくと、このブリっとベースがどんどん大きくなっているのが分かります。

Atmosなんかは音の配置が分散された結果、一番目立つかもしれません。

この変化、どんどん床の存在感が増す感じなのですが、このLPにきて突如床が大きく隆起して空間がくしゃっと潰れたような^^;

この曲が「DESTINY」と違うのは、ヴォーカルもリバーブというかエフェクトで音がやや貧弱なのでベースに追いやられている感じがして、

それで余計に空間がつぶれたようなイメージを受けるんです。

もっと言うともともとベースをはじめ低域が豊かでないので大きくすると固くてちょっと耳障りというかそこばかり気になる感じで。

うーん、これとかもフロアでDJLPかけてみんなが躍るような、そういう想定なんですかね・・・。フロアリミキシーズみたいな感じがしますね。

 

「春よ、来い」

イントロのハープの音が、エレピに対して大きくミックスされているように思います。LPを一聴してあれイントロってハープだったっけ?と思うくらい。

CDのほうはエレピに添えられて、エレピの音色づくりに使われている感じですが、LPのほうは主張大きく、弦を弾く音がしっかり入っています。

また、CDのほうは弾力ある打楽器系の低音に他の音が乗ってる感じですが、LPのほうはヴォーカルやエレピなどのどちらかというとメロディ系の音が大きくなっています。

私はこれはけっこう好きですね。リミックスは良くないばっかり書いている気がしますが、好きなのもあります^^;

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コラム1「実は音を聴き比べるのはなかなか難しい」

 

ミックスの違いを聴き比べようとしていますが、ミックス以降リスナーの耳に届くまでには色々な影響が加わっています。

聴き比べる音同士は同じ過程を経るので、関係ないようにも思うのですが、そうでもなく、

例えば質の悪い機材を使えばその影響(下図、紫のところ)で違いがわからなくなったりします。

また心理の影響も結構大きく、有名な話ですが、同じ音源でも少し音を大きくして聴かせると、多くの人が「音質が上がった、全く別物」と判断してしまいます。

 

複数の人がそれぞれの環境で音を聴くと、同じ音源でも違って聞こえてしまいます。

下図、真ん中より左側は同じものですが、右側はリスナーによって違います。主には、リスナーが持っている機材と、リスナー自身の個性によって聴こえる音は違います。

もちろん制作者も同じ過程を経て音を聴いているので、制作者とリスナーの聴いている音も違います。

リスナーとしては、自分の環境からの悪影響を出来るだけなくしたいものです。

部屋の影響はヘッドホンを使うことで下図のようにキャンセルできます(機材の影響のみにできる)

ただし、部屋の良い影響と各リスナーの頭部形状の影響まで失われてしまうので、スピーカーから音を聴いたときのリアリティは感じられません。

 

 

 コラム2「空間オーディオでやろうとしていること」

 

ここからだいぶ情報の精度が落ちるのですが、AppleMusicDolbyAtmosがやろうとしているのはこういうことではないか?という推察です。

製作者が聴かせたい音をリスナーに聴いてもらうために、上述から見える課題は次の2点になるかと思います。

・いかにリスナー側の違いを失くすか

・とは言え、部屋でスピーカーから音を聴いたようなリアリティーは保ちたい

AppleMusicDolbyAtmosがやろうとしてることを同じ図に描き込むとこんな感じではないでしょうか?

@まず、AppleMusicApple製品を使わせることでメディアと機材を同一にする(ユーザ側で違いが出ないようにする)。

  iPad, iPhone, マルチスピーカシステムなどいくつか機材の種類はありますが、提供音源をいくつか用意することで、ある程度同一化できるということです。

A理想的な部屋の影響を予め音源に付加しておく。 別に各リスナーが持つ部屋の影響を再現する必要はありません。理想的なリスニングルームの方がよいわけです。

Bリスナーの頭部の影響を測定し、AirPodsの中で付加してしまう。これにより各リスナーが持つ個性を取込んだ音を聴かせることが出来る。

 ここまでやってくれるのかはわかりませんが、AirPodsのサイトを見ると「パーソナライズされた空間オーディオと、〜」という機能が、これに近しいのではないかと思います。

 登載はAirPods3世代以降(第2世代には登載なし)、AirPodsProAirPodsMaxのようです。

 パーソナライズさせるために耳の形状を測定するようですが、これにはiPhoneX以降が必要なようですね(パーソナライズ情報自体はiPadなどでも共有できるようですが)。

 高いものなので、購入はAppleStoreで店員さんに訊いたり、試用してから決めるのが良さそうですね。

 

実は、人間の耳は2つしかなく(知ってるわ!)、スピーカーが何個あろうと人間はステレオでしか音が聴けないのです。

それでも左右だけでなく、上下前後から来る音源の方向を判断できています。これは両耳に来る音が音源の方向により違っているからです。

ですから、この両耳に来る音さえリアルに再現すれば、ステレオ(2ch)でも脳が勝手に勘違いして、上下前後から音が来るように感じらるはずです。

2chでこれをやるということが空間オーディオが目指しているところの一つかなと思います。今後のさらなる発展が楽しみですね。

 

ちなみに私の Dolby Atmos リスニング環境(たいしたもんではなく、iPadとヘッドホンですが^^;)

まず、AirPodsは持っていません^^;

環境A

機材はiPad mini3 system ver.15.7 + BOSE QuietComfort 45 headphones (Dolby Atmos 非対応)

上図で見ると、Bの私自身の頭部形状の影響のみがない状態です。やはり埋没感は薄いですね。

ただ、2Mixを聴いている時のような頭の中に低音とボーカルがいっぱいに満たされるような感覚はなく、

前方に移動した感じ。なんというか頭の中央のスペースが空いた感じがして、別の作業がやりやすいです(笑)

こういったところが、スピーカーで音を聴いている感覚に近いのかもしれません。

2Mixの頭の中が満たされた感を求めると物足りない感じがするかもしれません。)

もしAirPodsでBの影響を手に入れたら、もっと劇的に埋没感が増すのでしょうか??

クソ高いですが欲しくなってきますね。。。

環境B

iPadの内蔵スピーカーでも聴いてみましたが、特にどうということはありませんでした(笑)