アルバム売上記録

オリコンをベースにしたと思われる某サイトの加工データを参考に、ユーミンのアルバム売上枚数をグラフ化したものです。青い棒グラフが年間売上枚数、累積値と年間売上に開きがあるものは薄青の棒グラフで累積値を現しています(単位はいずれも万枚)。

赤い折線グラフはその年のTOP50の平均売上枚数、赤破線は年間1位の売上枚数です(単位はいずれも万枚)。

青い折線はTOP50の平均売上に対するユーミンの年間売上がどの程度の割合に当たるかを表し、これを相対比と呼んでいます。1以上であれば平均以上売れたことになります。

B】はベストアルバムであることを現しています。

時代によってレコード市場の大きさ自体が変わっているので、絶対的な売上枚数ではなく、相対比の推移でユーミンがどの程度売れているの判断しようという試みです。

なお、最上位の売上枚数が時点と50万枚程度空いてるような場合は、そのアルバム1枚で平均値が上がってしまうので、これを除外して相対比を計算しています。

86年まではLPチャートの値を参考にしています。80年代まではLP、カセット、CDなどのチャートが分かれており、総合的なデータはLPチャートでしか得られていないことに依りますが、

現在アルバム売上として計上されているデータとLPのデータに開きがある場合は、やはり累積値を表示しています。

データの推移が見やすいことを優先したため、一部のデータは削除あるいは近辺のデータに丸めこんで表示しています。

 縮小版

 

【メモ】

   ユーミンがデビューした70年代はTOP50の平均売上は15万枚前後。配信で曲が買われることが多くなった今よりも更に小さな市場でした。

   実質ユーミンが売れ始めたのは76年で、75年の時点では6月発売の「コバルトアワー」自体もまだそこまでは売れてなかったようです。
ただ、当時はユーミンに限らずレコードが発売されてからのリアクションがかなり遅かったようで、1位を取るにも徐々にチャートを昇るというのが普通だったようです。
76
年はTOP50の平均値の2倍以上を売り上げており、旧譜の「ひこうき雲」ですら、平均以上の1.29をマークしています。
相対比が2倍をマークするのは80年代後半で、7677年の荒井由実ブームがいかにすごかったかがわかります。

   結婚・改名後の77年以降リリースされたものは平均値の半分程度の値で、このあたりが松任谷初期の低迷期と呼ばれています。地方のコンサートなども空席が多かったようです。

   「サーフアンドスノウ」の値は非常にユニークで、発売した頃は相対比0.64 、売上22.1万枚と“低迷期”の値だったのに対し、累積値がその2倍近くあります。
これは長年「恋人がサンタクロース」がこのアルバムにしか収録されていなかったことに起因しているのではないかと思われます。

   81年発売の「昨晩お会いしましょう」以降、レコード市場の拡大と共にユーミンも売上を伸ばしてゆきます。相対値も1.50をマーク。
このあたりが第2次ブームと呼ばれています。

   88年発売の「Delight Slight Light KISS」で一気に相対比3.64をマーク、この時はユーミン一人が飛びぬけたような状況でした。
ここが第3次ブームと呼ばれており、この3次ブームは2次ブームで温めてきたものが一気に臨界点を超えたような訪れでした。
以降3年間はユーミンがアルバム年間売上1位を記録し、これと共に市場としてもCDメガヒット時代の幕が開けられました。

   90年発売の「天国のドア」で当時の日本最高売上記録を更新。前回の更新は81年の寺尾聰「リフレクションズ」約10年ぶりの記録更新でした。
ちなみにその前は73年発売の井上陽水の「氷の世界」でこのアルバムはなんと74年、75年の2年間連続でアルバム売上1位を記録しています。

   90年に入り、CD市場が一気に拡大、10年ぶりに更新した最高売上記録は翌年にはチャゲアスにあっさり抜かれ、更に2年後その記録もドリカムに抜かれます。
以降、99年宇多田ヒカル「First Love700万枚の大記録まで、ほぼ毎年、最高売上が更新されるCDバブルと呼ばれる時代に突入します。
ユーミンもこのCDバブルをけん引する存在として200万枚アーティスト的なキャラ付けをされていきますが、
相対比だけでみるとユーミンのピークは突出した「Delight Slight Light KISS」であり、これ以降は徐々に低下し、
90
年代後半相対比が1を割るまでミリオンヒットを連発しながらも、ゆっくりと世代交代されていったであろう様子がわかります。

   2000年前後のCDバブル盛りのころ、全く逆にユーミンは著しく売上を落としてゆきます。この時期300万枚以上を売り上げたベストアルバムが発売されますが、
オリジナルアルバムの売り上げ動向には、まったく影響を与えませんでした。02年のバラードベスト「bitter,...」も好セールスでしたがこれも同じく。
また相対比の推移だけで見てみると、アルバム「THE DANCING SUN」自体もベスト的な売れ方をしていたというふうにも見れるところが興味深いです。

   00年代に入り、音楽の違法アップロードが蔓延していたところに合法の音楽配信サービスが開始され、05年にiTMSも上陸。
違法DLへの取り締まりが強化され、音楽が配信で買われるようになっていったため、業界全体でCDの売上が低下しつづけます。
オリコンは長らく配信での売上情報をサービス各社から得ることができなかったようで、アーティストごとの動向がよくわからない時期が10年近く続きます。
ユーミンは06年「A Girl In Summer」より新作の配信を開始、過去作は05年より荒井由実作品のみを配信で販売、18年になってようやく全曲配信が行われました。

   00年代後半からはTOP50平均値からみれば相対比は低いままですが、CDの売上は10万枚前後をキープし続けております。
同年代のアーティストがほとんどオリジナルアルバムを出さなくなっているため、比較対象が中島みゆきくらいしかいないのですが、
彼女の売り上げと比較しても1.52.0倍近くを保っています。

   12年発売の40周年記念ベスト「日本の恋と、ユーミンと。」はCDが売れないこの時勢に累積で80万枚以上を売り上げています。
12
1120日発売のため12年の集計に間に合ってしまっており、13年の記録では年間17位ですが、
この年1位の嵐「LOVE」が79.6万枚であり、累積値ではこの記録とほぼ同じ売上です。

 

現在も現役であり続けるユーミンが売り上げ的にも十分健闘しているのではないかということを相対比をとおして表したかったのですが、
ほとんど若い世代が占めるTOP50平均値ではいささか難しかったようで、

TOP100Under50くらいで相対比を出せばもっとおもしろい結果が得られるかもしれません。

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