「ユーミン万歳!」聴き比べてみた
「ユーミン万歳!」全曲リミックスという説明もありますが、ほんとにそうかい?
ということで、既存音源と新音源の明らかに音が違う個所や、音が部分的に追加/削除されているといった違いを探してみました。
聴き比べは下図のような制作過程を想定し、聴き比べ[1][2][3]の3つの聴き比べを行っています。
(下図は、当サイトで想像したもので、実作業に基づいたものではありません。本当にこのようになっているかどうかは、わかりません。)
・ 本作には大きく分けると、従来のステレオ(2MIXと以下呼びます) と 空間オーディオ用のMIX が作られているようです。
前者は、CD、DL購入用の配信、サブスク配信で提供されており、後者はAppleMusicのサブスク配信のみでDolbyAtmos用の音源として提供されています。
・ 2MIX配信音源には全曲ではありませんが、リミックスされていると思われる曲が存在します。
リミックスについては下記のような錯綜とも思える情報が出ていますが、どの曲がこれに当たるかは公表されていません。
・ 配信は配信サービス元に関わらず、またDL/サブスクに関わらず全曲「2022 mix」という表記があります。
・ CDのパッケージや歌詞カードには「2022 mix」という表記はありません。タイトルステッカーに「最新2022年ミックスに」という表記があります。
・ キョードー西日本のサイトの掲載記事(公開終了)によると下枠内の作業を総称して「2022 mix」と呼んでいるという記載があります。
1)「UP MIX」→2mix 音源をリマスタリング 上記作業の境界線は非常に曖昧であり、明確に楽曲ごとに区別できるものではありません。 |
・ リットーベースのYoutubeチャンネルで放送された本作試聴会では、エンジニアのGOH氏よりリミックス31曲くらい、音源差替え11曲くらいという発言があります。
・ TwitterなどSNSでは、既にリスナーから思い思いの理解が示されています。
・ 上図では「2022 mix」について、キョードー西日本のサイトの掲載記事(公開終了)を参考にしています。
また、これまでの当サイトでのリミックス解釈に照らし合わせ、本作においては2) REMIXと3) SWEETをリミックスとして解釈します。
下記「聴き比べ[1]」においてもこれら2)3)で生じたと思われる違いを「違い」として判断します。
・ Dolby
Atmos音源については、発売時現在Apple Musicのサブスクリプションサービスでのみ提供されています(Amazon
Music他Dolby Atmosに対応したサービスでは提供されていません)。
再生ハード側の設定と要求によりDolby Atmos用の音源が配信されます。設定されていない場合は2MIXが配信されるようです。
iPadやiPhoneといった2chシステムへはDolby Atmon の2ch音源(2MIXとは音の定位が異なります)が配信されるようです。
AppleTV4Kのようなマルチスピーカー対応デコーダーへはマルチchデータが配信され(何ch分が配信されているかは不明)、
デコーダー側で接続されたシステムに応じてダウンミックスされるようです。
・ このページの情報は、当サイトでの聴き比べによる判断であり、制作側の実作業に基づいたものではありません。
また、「リミックス」という表記も当サイト独自の判断条件に基づいたもので、公式に示されたものではありません。他サイトへの転載はしないようお願いします。
聴き比べ[1]:既存音源との違い
上図2)3)についての違いをまとめました。他にお気づきの方はぜひフォームから教えてください。
なお、下記のような違いはひとまず除外しています。
・音がパワフル ・音がきらびやか ・音に広がりがある ・ボーカルがクリア ・残響がついた/なくなった ・低域が強い 理由としては、こういった全体的な音色に関する違いは、(もちろんミックスによって発生することも十分に考えられますが、) マスタリングの効果かもしれませんし、再生する機材によってその効果がより大きく出る場合もあるからです。 また、生理的な理由(耳がある音に敏感/鈍感)、心理的な理由(気のせい、音量が大きいと良い音に聴こえるとか)によっても違うと感じることがあるからです。 |
このページはかなりラフにやります。
※ 表中の「オリジナル」が何かはあまり気にしないでください。近年のベストか、オリジナルアルバムです。
※ 歌詞の漢字やかな、楽器名、奏法名は、テキトーです。
※ 違う度 ★★★すぐに分る ★★オリジナルを聴きこんでいれば気づく ★あえて探さないと見つからない
※ 表中のハイパーリンクは公式Youtubeにアップされた曲の該当部分へリンクしています。[40th]は同じく「日本の恋と、ユーミンと。」の該当個所へリンクしています。
※ なんとSpotifyで聴き比べ用のプレイリストを作ってくださっている方がいらっしゃいます。ありがたや〜!
Spotifyでは、本作以外の既存音源は2018年マスタリング音源が配信されているようです。
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違う度 |
分りやすい違い |
イントロ付近の違い |
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1-1. |
真夏の夜の夢 |
★★ |
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1-2. |
中央フリーウェイ |
★ |
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1-3. |
ダンデライオン |
★ |
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1-4. |
ひこうき雲 |
★ |
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1-5. |
緑の町に舞い降りて |
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1-6. |
青春のリグレット |
★★ |
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[40th] オリジナルはいかにも80年代の"残響かけてバッサリ音" |
1-7. |
DOWNTOWN BOY |
★ |
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1-8. |
瞳を閉じて |
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1-9. |
卒業写真 |
★ |
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1-10. |
最後の春休み |
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1-11. |
リフレインが叫んでる |
★★★ |
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1-12. |
よそゆき顔で |
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1-13. |
輪舞曲(ロンド) |
★ |
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1-14. |
サーフ天国、スキー天国 |
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1-15. |
海を見ていた午後 |
★★ |
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1-16. |
情熱に届かない |
★★★ |
最後のサビあたりからヴォーカルがどんどん走り始めるがミス?? |
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1-17. |
カンナ8号線 |
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2-1. |
Hello, my friend |
★★ |
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2-2. |
やさしさに包まれたなら |
★ |
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2-3. |
5cmの向う岸 |
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2-4. |
ダイアモンドダストが消えぬまに |
★★★ |
[40th] オリジナルはいかにも80年代の"残響かけてバッサリ音" |
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2-5. |
恋人がサンタクロース |
★ |
オリジナルは2回目のAメロからストリングスが入る |
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2-6. |
WANDERERS |
★★★ |
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2-7. |
シンデレラ・エクスプレス |
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2-8. |
ノーサイド |
★ |
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2-9. |
ダンスのように抱き寄せたい |
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2-10. |
DESTINY |
★ |
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2-11. |
満月のフォーチュン |
★★ |
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2-12. |
消灯飛行 |
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2-13. |
ホライズンを追いかけて |
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2-14. |
星空の誘惑 |
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2-15. |
セシルの週末 |
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2-16. |
花紀行 |
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2-17. |
春よ、来い |
★ |
サビの鈴が左右順番に定位 オリジナルはずっとセンター |
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3-1. |
Valentine's RADIO |
★★ |
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3-2. |
真珠のピアス |
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3-3. |
翳りゆく部屋 |
★★ |
オリジナルは改めて聴くとボーカルとベース以外逆相じゃないかというほど量感がない、かなり変なMIX。当時なりの空間サウンドを模索したのか?? |
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3-4. |
SWEET DREAMS |
★★★ |
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3-5. |
潮風にちぎれて |
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3-6. |
Forgiveness |
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3-7. |
冬の終り |
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3-8. |
あの日にかえりたい |
★ |
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3-9. |
ルージュの伝言 |
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3-10. |
埠頭を渡る風 |
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3-11. |
ベルベット・イースター |
★ |
オリジナルはほぼセンターに |
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3-12. |
VOYAGER 〜日付のない墓標〜 |
★★★ |
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3-13. |
守ってあげたい |
★ |
サビのボーカルが左右に分離 [40th] オリジナルはほぼセンターに |
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3-14. |
宇宙図書館 |
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3-15. |
ANNIVERSARY |
★★ |
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3-16. |
青いエアメイル |
★ |
(FMで聴いた時は もっと明らかな違いがあったような気がするが...) |
グレーアウトした曲はオリジナルと同じミックスだという解釈ですが、下記の2つの理由からそうではない可能性もあります。
1つはもちろん管理人が見つけられていないケースですが、もう1つはオリジナルのミックス過程が完全に再現されているケースです。
後者を簡単に説明しますと下記のような感じ。
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ミックスは単純に表現すると上図のように複数のトラック(Tr)を重ねてL,Rの2トラックにする作業です。上図の青いトラックがマルチテープの段階で、L,Rが2MIX音源です。各トラックによってL,Rに渡す音量が違います。同じ音量で渡せばそのトラックはL,Rの真中に定位しますし、Rにだけ大きく渡せば、そのトラックは右に寄ります。(実際は音量だけではなく、コンプやエコーのかかり具合などもここで調整され、単純な左右だけでない音の空間が出来上がるようです)。ちなみに、マルチのトラック数は、上図では5トラックしかありませんが、73年の「ひこうき雲」では16トラック、84年「NO SIDE」は24トラックが数本連動で使われ(連動のための信号もTrの1本に記録されているそうです)、92年の「Tears & Reasons」の段階では1曲につき100トラック近くもあったそうです。 |
これが曲の進行に伴い刻々変えられてゆく感じです。
この黄色い部分の過程が変わること(図ではオレンジで表現しています)を当サイトでは「ミックス違い」ということにしていますが、仮にTr1に何か処理を施した場合(例えばノイズを取るとか)、ミックスしなおすことになるのですが、素人考えでは人の手でオリジナルとそっくりにミックスするのは難しいのではないかと思えてしまいます。スープで例えるなら、レシピのないスープを飲んで、どの素材がどのくらいの量でどんな順序で混ざっているかを舌で分解し、良くなった素材を使って再度同じように新スープを作ってゆく感じでしょうか。 |
ところが、仮にこのミックス過程がすべて記録されており、機械的に再現できるとしたら、マルチのTr単位で処理を加えたとしても、完全にオリジナルのミックスを再現できることになります。極端なイメージですが、デジタルコピーしたマルチを再生するだけでサクサクとソフト上で自動的にミックスが再現されてゆく感じ。「ユーミン万歳!」ではトラックごとにノイズを取り除いたという説明がされており、この場合リミックスせざるをえないのですが、オリジナルと完全に同じミックス過程を施せるなら、2MIX後の音源を聴いてリミックスされたかどうかを判断することは難しくなりますし、全曲にこれが施されているなら、やはり全曲リミックスです。ちなみに83年「REINCARNATION」ではじめてコンピュータの支援を受けたミックスが行われており、その過程が記録され始めていたのかもしれません。一方で「万歳!」ではスタッフがトラックを1本1本聴いて確認する作業も行われたようで、これは逆にミックス過程が全く記録されていなかったためかもしれません。 |
聴き比べ[2] : 同じ曲の2MIXとDolby Atmos 2chMIXの違い
従来の2MIX(ステレオ)とDolby Atmosの2chMIXは同じ2chでもその2chに至る過程や方針が違います。
ただし、後者はあくまで前者のMIXに基づいて作られているようで、前者に全く存在しない音が後者に存在したりはしませんし、左にあったものが右にあるような大きな違いもないようです。
Dolby Atmosを聴くには不完全な環境(このページの最下部にシステムを書いています)での聴き比べですが、両者の聴こえ方の違いは歴然でした。
ヘッドホンで聴くと、2MIXは頭の中に音が定位し頭の中が音で満たされる感じですが、Dolby Atmosは頭の外側に定位する感じ。
ヘッドホンで聴いた場合の「Call me back」のイントロを絵で描くと^^;こんなイメージです(感じ方、表現の仕方は人それぞれということで、ご勘弁)。
本作収録音源の2MIX間でも何か違いがないか調べてみました。
比較は対象下記の通り @ CD音源 (iTunesでWAV 16bit/44.1kHzに変換)、 A ロスレス音源 (OTOTOYより購入, WAV 16bit/44.1kHz)、 B AAC 320kbps (moraより購入、AAC 16bit/44.1kHz相当、iTunesでWAV 16bit/44.1kHzに変換) C ハイレゾ音源 (OTOTOYより購入, WAV 24bit/96kHz) 曲はやはり「Call me back」です。 |
「配信」とひとことで言っても、少なくとも上記の6形態が存在しています。 当サイトではDLできるものを聴き比べていますが、6形態全てを聴き比べているわけではありません。 また、各配信サービスでどれが提供されているのか、いまいちはっきりしないのが現状です。 |
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波形と聴感を比較しました。当サイトの結論としては、 ・ 各音源@ABCはミックスによる違いは無いように思います。 ・
波形(マスタリング後の音源ということになるのでしょうか)は@ABは恐らく同じ、
@Aは、数値的には完全一致、 Bは圧縮しているため数値は異なりますが、ほぼ@Aと同じ傾向にあります。聴感上も違い分からず。 Cは音量分布が異なっており、ハイレゾの方が最大と平均の差が広い 聴感上の音色も異なっており「Call me back」の場合、少しだけ響きがあり柔らかい音に聴こえます。 |
波形の正確な比較のために、@に対し他の波形を上下反転させたもの(INV[○]と表記します)をミックスしてみました(@+INV[○]と表記します)。
波形が同じであれば、ミックス後、波形が消えてしまいます。例えば @ + INV[@] をすると波形が消えます。
分りにくいという方は、@+INV[○] = @−○ だと考えてください。同じだったら @ー@ = 0になるので、消えちゃう、消えなかったら同じではないという感じです。
@+INV[A]は無音になります。微妙に音量出てますが、平均音量の-104dBは16bit=約96dBなので記録できる最低音量領域です(・・・なんで測定出来てるんだ??)
@+INV[B]はAACにするときに圧縮し削られたデータが差分として出てきています。聴感上はシャワシャワした音漏れのような感じになります。平均-44dBというのは意外と大きな音ですね。
@+INV[C]は別音源といっていいでしょう。少なくともマスタリングが違うようです。このデータですが、普通に音楽として聴けることが意外でした。
ちなみにこれは、データ量の違いではなく、あくまで音色の違いが差分となって出てきています(データ量は揃えてミックスしています)。
おすすめの聴き比べ方法
先にデータを見に行ってしまいましたが、聴き比べについてもおすすめの方法と共に載せておきます。
マスタリング違いの聴き比べは、ミックス違いの効き比べより難しいかもしれません。パッと聴いて何か違うぞと感じると、より細かく分解的に聴いて違いを見つけようとするものです。ところが、ミックス違いと異なり、マスタリングは違ったとしても基本的に各音の定位は同じなので、ディティールを聴き比べていこうとすればするほど、違いが分からなくなってきたりします。最初の「パッと聴いて違う」と感じたときが一番違いを感じられているのかもしれません。また、AとBを聴き比べる場合、Aを止めてBを再生する間に、たいていAがどんな音だったか忘れてしまいますよね。
そこで、もっと音源を直感的・全体的に比較でき、止めることなく連続的に聴き比べられる方法を考えてみました。
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左図は「真夏の夜の夢」の波形で、上が@CD音源、下がCハイレゾ音源です。 10秒ごとに@とCがテレコに間引いてあり、これをミックスした音源を作りそれを聴きます。要は、ノンストップでどんどん@Cを入れ替えながら、シームレスにマスタリングが変わるときの微妙な違和感を感じようという算段です。(左図は1曲丸ごとやっていますが、@Cの同じ個所を繰り返し繋いでもよいかもしれません。
聞いた感じでは、@CDとCハイレゾは18リマスターと19リマスターほどは違いが無いように思います。@CDのほうはボーカルがやや歪みっぽくて輪郭がはっきりしている感じ(歪みと言っても割れてるとかではなく、表面がギラっとした感じでしょうか。イメージとしては表面に小さなブツブツのある金属という感じ。)。ハイレゾのほうはもっとソフトな感じで、相対的に低域が多いように感じます。
面白いのはボーカルで音量を揃えようとしても揃わないというか、ハイレゾのほうを大きくしてもCDのボーカルのほうが目立つんですよね。良く言えばしっかり知覚できる、悪く言えば耳につく、という感じがします。 |
ちなみに、この波形を作るために使用したのはAudacityというソフトウェアです。実は私としては初マルチトラック編集でしたがすごく簡単で、今まで机たたいてリズム合わせながらワントラックで編集していたのは本当に時間の無駄でした(笑)。 |
コラム1「実は音を聴き比べるのはなかなか難しい」
ミックスの違いを聴き比べようとしていますが、ミックス以降リスナーの耳に届くまでには色々な影響が加わっています。
聴き比べる音同士は同じ過程を経るので、関係ないようにも思うのですが、そうでもなく、
例えば質の悪い機材を使えばその影響(下図、紫のところ)で違いがわからなくなったりします。
また心理の影響も結構大きく、有名な話ですが、同じ音源でも少し音を大きくして聴かせると、多くの人が「音質が上がった、全く別物」と判断してしまいます。
複数の人がそれぞれの環境で音を聴くと、同じ音源でも違って聞こえてしまいます。
下図、真ん中より左側は同じものですが、右側はリスナーによって違います。主には、リスナーが持っている機材と、リスナー自身の個性によって聴こえる音は違います。
もちろん制作者も同じ過程を経て音を聴いているので、制作者とリスナーの聴いている音も違います。
リスナーとしては、自分の環境からの悪影響を出来るだけなくしたいものです。
部屋の影響はヘッドホンを使うことで下図のようにキャンセルできます(機材の影響のみにできる)。
ただし、部屋の良い影響と各リスナーの頭部形状の影響まで失われてしまうので、スピーカーから音を聴いたときのリアリティは感じられません。
コラム2「空間オーディオでやろうとしていること」
ここからだいぶ情報の精度が落ちるのですが、AppleMusicやDolbyAtmosがやろうとしているのはこういうことではないか?という推察です。
製作者が聴かせたい音をリスナーに聴いてもらうために、上述から見える課題は次の2点になるかと思います。
・いかにリスナー側の違いを失くすか
・とは言え、部屋でスピーカーから音を聴いたようなリアリティーは保ちたい
AppleMusicやDolbyAtmosがやろうとしてることを同じ図に描き込むとこんな感じではないでしょうか?
@まず、AppleMusicとApple製品を使わせることでメディアと機材を同一にする(ユーザ側で違いが出ないようにする)。
iPad, iPhone, マルチスピーカシステムなどいくつか機材の種類はありますが、提供音源をいくつか用意することで、ある程度同一化できるということです。
A理想的な部屋の影響を予め音源に付加しておく。 別に各リスナーが持つ部屋の影響を再現する必要はありません。理想的なリスニングルームの方がよいわけです。
Bリスナーの頭部の影響を測定し、AirPodsの中で付加してしまう。これにより各リスナーが持つ個性を取込んだ音を聴かせることが出来る。
ここまでやってくれるのかはわかりませんが、AirPodsのサイトを見ると「パーソナライズされた空間オーディオと、〜」という機能が、これに近しいのではないかと思います。
登載はAirPods第3世代以降(第2世代には登載なし)、AirPodsPro、AirPodsMaxのようです。
パーソナライズさせるために耳の形状を測定するようですが、これにはiPhoneX以降が必要なようですね(パーソナライズ情報自体はiPadなどでも共有できるようですが)。
高いものなので、購入はAppleStoreで店員さんに訊いたり、試用してから決めるのが良さそうですね。
実は、人間の耳は2つしかなく(知ってるわ!)、スピーカーが何個あろうと人間はステレオでしか音が聴けないのです。
それでも左右だけでなく、上下前後から来る音源の方向を判断できています。これは両耳に来る音が音源の方向により違っているからです。
ですから、この両耳に来る音さえリアルに再現すれば、ステレオ(2ch)でも脳が勝手に勘違いして、上下前後から音が来るように感じらるはずです。
2chでこれをやるということが空間オーディオが目指しているところの一つかなと思います。今後のさらなる発展が楽しみですね。
ちなみに私の Dolby Atmos リスニング環境(たいしたもんではなく、iPadとヘッドホンですが^^;)
まず、AirPodsは持っていません^^;
環境A
機材はiPad mini3 system ver.15.7 + BOSE QuietComfort 45 headphones (Dolby Atmos 非対応)。
上図で見ると、Bの私自身の頭部形状の影響のみがない状態です。やはり埋没感は薄いですね。
ただ、2Mixを聴いている時のような頭の中に低音とボーカルがいっぱいに満たされるような感覚はなく、
前方に移動した感じ。なんというか頭の中央のスペースが空いた感じがして、別の作業がやりやすいです(笑)
こういったところが、スピーカーで音を聴いている感覚に近いのかもしれません。
(2Mixの頭の中が満たされた感を求めると物足りない感じがするかもしれません。)
もしAirPodsでBの影響を手に入れたら、もっと劇的に埋没感が増すのでしょうか??
クソ高いですが欲しくなってきますね。。。
環境B
iPadの内蔵スピーカーでも聴いてみましたが、特にどうということはありませんでした(笑)